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ver.27.0 坂口征夫という生き方

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2010.05.03
 元新日本プロレス社長、世界の荒鷲 a.k.a. 坂口征二を父に持ち、俳優:坂口憲二を弟に持つ、総合格闘家:坂口征夫選手が、この日、静かに引退した。

人間死に方は選べないが、生き方は自由だろ (銀魂)

 "殺るか殺られるか"、そんな闘い方が格好いいのは誰でも知っている。けれど、王者への階段を登るには、確実に勝利を重ね、ランキングを上げなければならない。「プロとして魅せる」ということは簡単そうで難しい。

 そんな中、坂口征夫はいつだって殺るか殺られるかの真正面からの殴り合いを毎回展開しようとした。
 受け止めてくれなくて、展開出来ないいことだってあった。そんな時は試合後、いつもファンへの謝罪を口にした。
 受け止めてくれたって、激しく散ることだってあった。けれど、そんな時の試合後は、顔を腫らしながらも気持ち良さそうだった。

ただ、この闘い方の寿命は短い。

 引退を発表した記者会見で
「日常生活での物忘れも激しく、言い方は悪いのですがバカになってきているのも見え隠れしていました」

 格闘家においてダメージの蓄積は死に直結する。引退後のボクサーがお茶の間でオバカだとモテはやされているが、その光景は、時に痛々しい。

 そんなリスクは承知の上で、プロ格闘家になるのだろうが、やはり引退後の生活を考えると、今回は英断だし勇断だと思う。

 じゃあそんな闘い方をするなよ、と思われるかも知れないが、一度リングに上がったら、選手達はそんなことは忘れるに違いないのだ。


死ぬ覚悟はあるが、簡単に命を捨てる気はない (宮本武蔵)

 彼は試合に臨むにあたり、殺し合いとう言葉をよく口にした。そこにはリターンがあるからこそ、常にリスクを背負っていた。

 引退の決意を伝えた際、パンクラス側に引退試合を提案された。その相手とは生え抜きでベテランの伊藤崇文選手だったという。でもやはり、一度消えた炎を点火することは出来ず、引退セレモニーという形で、闘わずして幕を引くことした。

 その理由について、
「辞めるのを前提でリングに上がって試合をするのは、殺し合いの駆け引きではありません」
 最後まで試合=殺し合いというスタイルは変えることはなかった。


明日、死ぬかのように生きろ。永遠に生きるかのようにして、学べ。(ガンジー)

 引退セレモニーで彼が放った言葉。
「自分はこのリングで生まれ、そしてこのリングで死ねて本当に良かったと思いました」

 偉大なる父と弟という光に挟まれ、やさぐれた時期もあったという。そして迷いに迷い、33歳という遅いデビューを果たし、36歳にして、短くも激しい格闘家人生を終えた。

 リング上で最後に放った言葉。
「今日で自分の背中に背負った刀は鞘に納めます。ただ、錆び付かせないようにずっと研ぎ続けます。いつかパンクラスが困ったときに、その刀をもう一度抜けるように頑張っていきたいと思います」

 最後まで、義を重んじる彼らしい言葉。本当に記録ではなく記憶に残る希有の格闘家。僕は坂口征夫という格闘家がいたことを一生忘れない。
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