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〜洗練された凶器〜 - 「VIVA!格闘技」出張版 - 格信犯ウェブ

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「VIVA!格闘技」出張版

〜洗練された凶器〜

ちり
2004.08.13
★ちり★ VIVA!格闘技管理人 販売員
ヒース・ヒーリングを愛するちりさんの総合格闘技サイト。女性ならではの独自の視点からのファッション・タトゥーチェックや観戦日記などのコンテンツは必見です。BBSの盛況はものすごいです。(marc_nas)
 私の父は宝石商という職についている。私に何を求めていたのか定かではないが、小さな頃、父から聞かされる話は常に「石」の話だった。ダイヤモンドの4Cから始まり、最後は必ずエメラルドの話で終わる。クレオパトラが愛した石エメラルド。父もこの石には他にない魅力を感じていたようだ。「エメラルドの内部にはひびや気泡が含まれているため、衝撃をうけると割れてしまうことがある。」から始まり「美しい石であるが、気をぬいて身に付けていたら自分自身が飲み込まれてしまうほどの凶暴さがエメラルドにはある。」確かそんな締めくくりであった。世間一般の子供が桃太郎やおむすびころりんを喜んで聞く年頃に、私はそんな石の話を聞かされて育った。
 成長に伴い、父の石話も徐々に回数が減ってきた。毎回同じ話だからである。エメラルドどころか格闘技に明け暮れ、近所の体育館にプロレスが来るとなればねだってチケットを買ってもらった。極真の見学にも連れて行ってもらった。長女である私に小さな頃から石についての蘊蓄を語り、跡を継がせようとした父の企みはまんまと音をたてて崩れた。最近ではTVで格闘技の放映があると「お前、これ観に行ったのか?」と聞く。先日「いい年をした父娘2人きり」という非常にキツイ時間があった。ほんの数時間なのだが、今さら父と話すことなど特にない。父は気まずさのあまりアタッシュケースから宝石を取り出し並べ始めた。そこで私は久しぶりに思い出したのである。エメラルドの話を。
「昔エメラルドの話をよくしてくれたよね。なんで?」
「俺が一番好きな石だからな」
「あ、そう・・」
会話終了である。なんとはなく気になったのでエメラルドについて調べてみた。なぜ父はこの石が好きなのだろうか?と。父の書斎から宝石について書かれた本を読むとそこにはこう書いてあった。
「エメラルド、それは極限まで洗練された凶器」
 宝石は美しいけれど、花や蝶のような罪のない美しさではない。その美しさは手強く凶暴な美しさなのだ。私にとっての格闘技と同じである。クレオパトラが多くの男性を魅了したのはエメラルドのパワーだったとか。エメラルドであれ格闘技であれ、人を魅了する力を持っているものには、そこに計り知れない何かがあるような気がしてならない。宝石にもある種の光を当てると、様々な色の光を乱反射する蛍光石があるように、格闘家達もリング上でのスポットライトを浴びた瞬間、極限まで洗練された凶器へと変貌を遂げるのではないだろうか。
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