![]() |
総合格闘技向上委員会ver.27.0 坂口征夫という生き方 |
marc_nas 2010.05.03 |
元新日本プロレス社長、世界の荒鷲 a.k.a. 坂口征二を父に持ち、俳優:坂口憲二を弟に持つ、総合格闘家:坂口征夫選手が、この日、静かに引退した。
■人間死に方は選べないが、生き方は自由だろ (銀魂)
"殺るか殺られるか"、そんな闘い方が格好いいのは誰でも知っている。けれど、王者への階段を登るには、確実に勝利を重ね、ランキングを上げなければならない。「プロとして魅せる」ということは簡単そうで難しい。
そんな中、坂口征夫はいつだって殺るか殺られるかの真正面からの殴り合いを毎回展開しようとした。
受け止めてくれなくて、展開出来ないいことだってあった。そんな時は試合後、いつもファンへの謝罪を口にした。
受け止めてくれたって、激しく散ることだってあった。けれど、そんな時の試合後は、顔を腫らしながらも気持ち良さそうだった。
ただ、この闘い方の寿命は短い。
引退を発表した記者会見で
「日常生活での物忘れも激しく、言い方は悪いのですがバカになってきているのも見え隠れしていました」
格闘家においてダメージの蓄積は死に直結する。引退後のボクサーがお茶の間でオバカだとモテはやされているが、その光景は、時に痛々しい。
そんなリスクは承知の上で、プロ格闘家になるのだろうが、やはり引退後の生活を考えると、今回は英断だし勇断だと思う。
じゃあそんな闘い方をするなよ、と思われるかも知れないが、一度リングに上がったら、選手達はそんなことは忘れるに違いないのだ。
■死ぬ覚悟はあるが、簡単に命を捨てる気はない (宮本武蔵)
彼は試合に臨むにあたり、殺し合いとう言葉をよく口にした。そこにはリターンがあるからこそ、常にリスクを背負っていた。
引退の決意を伝えた際、パンクラス側に引退試合を提案された。その相手とは生え抜きでベテランの伊藤崇文選手だったという。でもやはり、一度消えた炎を点火することは出来ず、引退セレモニーという形で、闘わずして幕を引くことした。
その理由について、
「辞めるのを前提でリングに上がって試合をするのは、殺し合いの駆け引きではありません」
最後まで試合=殺し合いというスタイルは変えることはなかった。
■明日、死ぬかのように生きろ。永遠に生きるかのようにして、学べ。(ガンジー)
引退セレモニーで彼が放った言葉。
「自分はこのリングで生まれ、そしてこのリングで死ねて本当に良かったと思いました」
偉大なる父と弟という光に挟まれ、やさぐれた時期もあったという。そして迷いに迷い、33歳という遅いデビューを果たし、36歳にして、短くも激しい格闘家人生を終えた。
リング上で最後に放った言葉。
「今日で自分の背中に背負った刀は鞘に納めます。ただ、錆び付かせないようにずっと研ぎ続けます。いつかパンクラスが困ったときに、その刀をもう一度抜けるように頑張っていきたいと思います」
最後まで、義を重んじる彼らしい言葉。本当に記録ではなく記憶に残る希有の格闘家。僕は坂口征夫という格闘家がいたことを一生忘れない。
![]() |
総合格闘技向上委員会ver.26.0 熟し過ぎた禁断の果実 -Dynamite!!2008- |
marc_nas 2009.02.07 |
第一試合からメイン:桜庭×田村戦までの十数試合。どの試合も内容、質ともに素晴らしかった。迎えたメイン、凡戦だった。内容、質ともに。のちに、猪木×アリ戦のように"世紀の凡戦"と詠われるかも知れないが、現時点ではそうは思えない。
技術論は誰にでも語ることは出来る。ただ精神論(心情)は二人にしか分からないし、それ以外の人が語っても、それは憶測の域を超えることはできない。その上で、戦前、試合直後、今になって思うことを、まとまりきらない思いを秘めたまま吐き出していくとする。
技術論は誰にでも語ることは出来る。ただ精神論(心情)は二人にしか分からないし、それ以外の人が語っても、それは憶測の域を超えることはできない。その上で、戦前、試合直後、今になって思うことを、まとまりきらない思いを秘めたまま吐き出していくとする。
試合が決まってから、Dynamite!!公式サイト上にて桜庭×田村戦のキャッチコピーが公募された。自分が応募したコピーは「熟し過ぎた禁断の果実」。
オレンジと赤の掛け合わせは、熟し過ぎた。摘み取る最高のタイミングは今だったのか、否、遅すぎたのだ。
ずいぶん前から、桜庭×田村戦は待望派と否定派で論争が繰り返されてきた。自分は少数派の否定派を貫き通して来た。榊原さん(元DSE代表)が退いた際に、リング上で実現を誓った時でさえ、遅すぎると思った。
桜庭がリアルにグレイシー狩りをしている頃なら観たかった。なぜなら同じ頃、田村がヘンゾにKOKルールで疑惑の判定勝利したことを、比較対象として語っていた熱狂的田村ファンの鼻っ柱を折って欲しかったから。
試合が決まってから、幾人かに尋ねられた。
「観たいか?」と。
考えても出る答えは同じ。
「観たくはないけれど、観てしまう」と。
やっぱり観てしまった。
壮大なバックボーンがある限り、この試合にテーマはある。田村も桜庭も、もう残された試合は多くはない。だから、テーマのない試合をしても仕方ないし、ファンも観たくない。
田村は高田延彦の引退試合という残り一枚の切符を受け取り、そして、見事にKOし、躯を拾い上げた。自分は今回、田村が引退すると思っていので、躯を拾い上げるなら、桜庭しかいないと思っていた。これが、僕が絞り出したテーマ(理由付け)だった。
また、今回こそ、UWFなんて言葉が使われる最後の試合だと思いたかった。
だけれども、その試合内容に過度な期待など全くなかった。感情がもつれる云々は関係なく、最盛期を過ぎた二人の上手く絡み合わない試合が淡々と行われるだけ。プロレス時代を懐かしみ、プロレスすることさえままならないと思った。
なのに、僕らファンは必死に意味を見出し、試合までの日々を書き紡ぐ。そう、あらゆるところに「くだらない試合になる」と言い続け、書き続けた。今考えると、それは自己防衛のために自己暗示だったのかも知れない。
実際、大会が始まると、第一試合が終わって「いいスタート!」と思い、中村×所戦が終わって「いい流れ!」と喜んでしまっていた。
格闘技は個人競技であり、「前菜からメイン」ではないのは分かっている。まして、なにより期待なんてしていない。けれど、メインまでの準備をしている自分がいた。
そしてメイン。やはり、皆の期待を裏切った。過度な期待だったのかもしれない。だから、落差で凹んだのかも知れない。あの試合を面白いという人は偏屈者に違いない。もっと言うと、一部の田村ファンだけじゃないだろうか。
試合後に率直に感じた事。それは、両者ともお互いを過剰に意識しすぎる余り、あのような結果になってしまったのではないのかと。
いろんなことがあったし、いろんなことを考えたんだと思う。二人の周りを複雑に交差する人間模様。二人はその中心である交差点となり、複雑に絡み合う糸はもつれ、何度か途切れそうになりながらも、対峙することになったが、ほどけることはなかった。
二人は加害者ではなく、被害者だった。大きな荷物を背負わされたのか、自ら背負ったのか、普通の精神状態で試合に挑めなかった。ただアスリートであるならば、競技に向かう姿としては失格だった。また、プロスポーツマンとしても、エンタテイメントとして魅せるには物足りなすぎた。
結果、二人はまた背負う事になった。けれど、もうおろしていいと思う。十分傷ついた。もう充分。大会コピーである「踏み出す、傷つく、だけど踏み出す。」というのであれば、「傷つく、やはり傷つく。踏み出したその先に何があったのか。」と問いたい。
もう「あの時は〜」「UWFという〜」なんて言葉、いらない。青木が、川尻が、MMAのあるべき姿を見せてくれた。プロレス、UWF、ヴァーリトゥードなんて言葉は最後。MMA、ミックスド・マーシャル・アーツ、これが今。UFC全盛の今、日本が世界に立ち向かうなら。さようなら、UWF。こんにちわ、MMA。
オレンジと赤の掛け合わせは、熟し過ぎた。摘み取る最高のタイミングは今だったのか、否、遅すぎたのだ。
ずいぶん前から、桜庭×田村戦は待望派と否定派で論争が繰り返されてきた。自分は少数派の否定派を貫き通して来た。榊原さん(元DSE代表)が退いた際に、リング上で実現を誓った時でさえ、遅すぎると思った。
桜庭がリアルにグレイシー狩りをしている頃なら観たかった。なぜなら同じ頃、田村がヘンゾにKOKルールで疑惑の判定勝利したことを、比較対象として語っていた熱狂的田村ファンの鼻っ柱を折って欲しかったから。
試合が決まってから、幾人かに尋ねられた。
「観たいか?」と。
考えても出る答えは同じ。
「観たくはないけれど、観てしまう」と。
やっぱり観てしまった。
壮大なバックボーンがある限り、この試合にテーマはある。田村も桜庭も、もう残された試合は多くはない。だから、テーマのない試合をしても仕方ないし、ファンも観たくない。
田村は高田延彦の引退試合という残り一枚の切符を受け取り、そして、見事にKOし、躯を拾い上げた。自分は今回、田村が引退すると思っていので、躯を拾い上げるなら、桜庭しかいないと思っていた。これが、僕が絞り出したテーマ(理由付け)だった。
また、今回こそ、UWFなんて言葉が使われる最後の試合だと思いたかった。
だけれども、その試合内容に過度な期待など全くなかった。感情がもつれる云々は関係なく、最盛期を過ぎた二人の上手く絡み合わない試合が淡々と行われるだけ。プロレス時代を懐かしみ、プロレスすることさえままならないと思った。
なのに、僕らファンは必死に意味を見出し、試合までの日々を書き紡ぐ。そう、あらゆるところに「くだらない試合になる」と言い続け、書き続けた。今考えると、それは自己防衛のために自己暗示だったのかも知れない。
実際、大会が始まると、第一試合が終わって「いいスタート!」と思い、中村×所戦が終わって「いい流れ!」と喜んでしまっていた。
格闘技は個人競技であり、「前菜からメイン」ではないのは分かっている。まして、なにより期待なんてしていない。けれど、メインまでの準備をしている自分がいた。
そしてメイン。やはり、皆の期待を裏切った。過度な期待だったのかもしれない。だから、落差で凹んだのかも知れない。あの試合を面白いという人は偏屈者に違いない。もっと言うと、一部の田村ファンだけじゃないだろうか。
試合後に率直に感じた事。それは、両者ともお互いを過剰に意識しすぎる余り、あのような結果になってしまったのではないのかと。
いろんなことがあったし、いろんなことを考えたんだと思う。二人の周りを複雑に交差する人間模様。二人はその中心である交差点となり、複雑に絡み合う糸はもつれ、何度か途切れそうになりながらも、対峙することになったが、ほどけることはなかった。
二人は加害者ではなく、被害者だった。大きな荷物を背負わされたのか、自ら背負ったのか、普通の精神状態で試合に挑めなかった。ただアスリートであるならば、競技に向かう姿としては失格だった。また、プロスポーツマンとしても、エンタテイメントとして魅せるには物足りなすぎた。
結果、二人はまた背負う事になった。けれど、もうおろしていいと思う。十分傷ついた。もう充分。大会コピーである「踏み出す、傷つく、だけど踏み出す。」というのであれば、「傷つく、やはり傷つく。踏み出したその先に何があったのか。」と問いたい。
もう「あの時は〜」「UWFという〜」なんて言葉、いらない。青木が、川尻が、MMAのあるべき姿を見せてくれた。プロレス、UWF、ヴァーリトゥードなんて言葉は最後。MMA、ミックスド・マーシャル・アーツ、これが今。UFC全盛の今、日本が世界に立ち向かうなら。さようなら、UWF。こんにちわ、MMA。
![]() |
総合格闘技向上委員会ver.25.0 儚く消える夢ではない -080315_DREAM.1- |
marc_nas 2008.03.17 |
ーPRIDE×HERO'S×K-1=DREAM。
ー地球上の格闘技、全てがここに集結。その名はDREAM。
そんな仰々しい名文句から地上波放送がスタート。夢路をたどらずにはいられない。
オープニングの全選手入場、煽り(試合前の紹介)VTRなど、今までのTBSのHERO'Sとは一戦を画す。今までの煽りVは、お涙頂戴の家族愛ばかりをフューチャーしていたが、今回は、ショートームーヴィー並の完成度を誇ったPRIDEの演出陣を組み入れ、かつ地上波の一般視聴者にも伝わる内容になっていた。僕にはもっと格闘技カラーを出して欲しいところだけれど。
※ちなみに会場では立木文彦さんのナレーション
解説は(PRIDE・TK高阪)×(HERO'S・須藤元気+山本KID)のコラボ。レフェリーも、(PRIDE・島田+野口)+(HERO'S・芹沢)と、これまたコラボ。マッチメイクだけでなく、すべてが夢の掛け合わせ。
そして、肝心のPRIDE vs. HERO'Sという図式の試合結果はというと、KID、ヒベイロ、宇野あたりのトップ所が出場していないとはいえ、大方の予想通りPRIDE勢の全勝となった。
もっとも僕の中での-70kgのランキングは以下の通り、PRIDE勢が占める。
1:五味隆典[PRIDE]
2:桜井マッハ速人[PRIDE]
3:青木真也[PRIDE]
4:ギルバート・メレンデス[PRIDE]
5:山本“KID"徳郁[HERO'S]
6:川尻達也[PRIDE]
7:J・カバウカンチ(J.Z.カルバン)[HERO'S]
8:石田光洋[PRIDE]
以下、V・ヒベイロ、J・ハンセン、宇野...。
※65kg級のKIDや76kg級のマッハも含み、BJペン、G・サンピエール除く
もちろん、HERO'Sのトーナメントを制したKIDやカルバンは強いのだが、対戦相手がリトマス試験紙としては、世界基準ではないから。しかし、そんな創り上げられたHERO達が、世界基準のPRIDE勢と相見えるのだ。難しい理屈は抜きにして、純粋な"格闘技のファン"としては、こんなワクワクは夢心地。夢うつつになっている場合ではない。
ー地球上の格闘技、全てがここに集結。その名はDREAM。
そんな仰々しい名文句から地上波放送がスタート。夢路をたどらずにはいられない。
オープニングの全選手入場、煽り(試合前の紹介)VTRなど、今までのTBSのHERO'Sとは一戦を画す。今までの煽りVは、お涙頂戴の家族愛ばかりをフューチャーしていたが、今回は、ショートームーヴィー並の完成度を誇ったPRIDEの演出陣を組み入れ、かつ地上波の一般視聴者にも伝わる内容になっていた。僕にはもっと格闘技カラーを出して欲しいところだけれど。
※ちなみに会場では立木文彦さんのナレーション
解説は(PRIDE・TK高阪)×(HERO'S・須藤元気+山本KID)のコラボ。レフェリーも、(PRIDE・島田+野口)+(HERO'S・芹沢)と、これまたコラボ。マッチメイクだけでなく、すべてが夢の掛け合わせ。
そして、肝心のPRIDE vs. HERO'Sという図式の試合結果はというと、KID、ヒベイロ、宇野あたりのトップ所が出場していないとはいえ、大方の予想通りPRIDE勢の全勝となった。
もっとも僕の中での-70kgのランキングは以下の通り、PRIDE勢が占める。
1:五味隆典[PRIDE]
2:桜井マッハ速人[PRIDE]
3:青木真也[PRIDE]
4:ギルバート・メレンデス[PRIDE]
5:山本“KID"徳郁[HERO'S]
6:川尻達也[PRIDE]
7:J・カバウカンチ(J.Z.カルバン)[HERO'S]
8:石田光洋[PRIDE]
以下、V・ヒベイロ、J・ハンセン、宇野...。
※65kg級のKIDや76kg級のマッハも含み、BJペン、G・サンピエール除く
もちろん、HERO'Sのトーナメントを制したKIDやカルバンは強いのだが、対戦相手がリトマス試験紙としては、世界基準ではないから。しかし、そんな創り上げられたHERO達が、世界基準のPRIDE勢と相見えるのだ。難しい理屈は抜きにして、純粋な"格闘技のファン"としては、こんなワクワクは夢心地。夢うつつになっている場合ではない。
地上波での放送順に各試合を振り返ってみる。
■ヨアキム・ハンセン×朴光哲
修斗→PRIDEに出場していたがHERO'Sに移籍したハンセン。長いリーチのせいなのか、ジャブにしろショートレンジの打撃が強く、長い足で、胴を四の字にロックし、グラウンドでも次々に極めを仕掛ける。修斗の体現する打・投・極、全ての面で朴を圧倒。「もっと来い」と挑発したりと面白い試合ではあったが、この試合をトップに持ってきたことが、今までのTBSからは信じられない。
■ミノワマン×イ・グァンボム
実際の会場での第一試合はこの試合。元プロ野球選手なんて肩書きを持つ相手を用意するあたり、HERO'Sイズムの残骸か。こんなクソみたいな相手でも、エンタテインしようとする美濃輪をリスペクト。
■桜井マッハ速人×門馬秀貴
本来の76kg級で減量苦がなかったのか、顔色のいい二人。得意の首相撲からの膝、ローが素晴らしくいいマッハ。それにしても、止めるのが遅すぎる。死んじゃでしまうよ。
■川尻達也×ブラック・マンバ
戦前の予想では、川尻の圧倒的勝利が多かったはず。蓋を開けると、腰が重くテイクダウンを許さず、グラウンドになってもマニュアルにはない破天荒なディフェンスと、下からの振り幅の長い膝で極めさせないマンバ。ただ、マンバ、ロープを掴みすぎ。イエローを与えるべき。
■エディ・アルバレス×アンドレ・ジダ
今大会、ベスト掘り出し者、そしてベストインパクトを残した試合。ジダのシュートボクセ仕込みの大振りでありながら、停まらない打撃により、2度のダウンを許したアルバレスだったが、回転の早いコンビネーションで盛り返す。そして、確かなレスリング技術とパウンドテクでボッコボコに。試合後にはコーナーポストからバク転まで披露。まごうことなき珠玉。この眩しい光、石田を持ってしても消せるのか。
■石田光洋×チョン・ブギョン
■宮田和幸×ルイス・ブスカペ
■永田克彦×アルトゥール・ウマハノフ
他の試合は完全ノーカットだった分、数十秒のダイジェストとなった3試合。ウマハノフ以外は順当に。ノーカットで観たかった。
■J.Z.カルバン×青木真也
一瞬で極められる関節を持つ青木と、一瞬でKO出来る打撃を持つカルバンの異常な緊張感を放つ、一進一退の攻防。この空気感を待っていた。PRIDE×HERO'Sの図式を最も感じられる試合だっただけに、まさかのノーコンテストは残念。どういう裁定が下され、どちらが勝ち上がるのかは一週間以内に会見にて。
■ミルコ・クロコップ×水野竜也
オープニングからCM明けまでウザいくらい、何度も煽られたミルコ凱旋。水野に、K-1での澤屋敷のシンデレラストーリーを、期待するもやはり予想通り。ミルコの次戦、噂されるマイティ・モー、バンナ、チェ・ホンマンに夢見る。
■ヨアキム・ハンセン×朴光哲
修斗→PRIDEに出場していたがHERO'Sに移籍したハンセン。長いリーチのせいなのか、ジャブにしろショートレンジの打撃が強く、長い足で、胴を四の字にロックし、グラウンドでも次々に極めを仕掛ける。修斗の体現する打・投・極、全ての面で朴を圧倒。「もっと来い」と挑発したりと面白い試合ではあったが、この試合をトップに持ってきたことが、今までのTBSからは信じられない。
■ミノワマン×イ・グァンボム
実際の会場での第一試合はこの試合。元プロ野球選手なんて肩書きを持つ相手を用意するあたり、HERO'Sイズムの残骸か。こんなクソみたいな相手でも、エンタテインしようとする美濃輪をリスペクト。
■桜井マッハ速人×門馬秀貴
本来の76kg級で減量苦がなかったのか、顔色のいい二人。得意の首相撲からの膝、ローが素晴らしくいいマッハ。それにしても、止めるのが遅すぎる。死んじゃでしまうよ。
■川尻達也×ブラック・マンバ
戦前の予想では、川尻の圧倒的勝利が多かったはず。蓋を開けると、腰が重くテイクダウンを許さず、グラウンドになってもマニュアルにはない破天荒なディフェンスと、下からの振り幅の長い膝で極めさせないマンバ。ただ、マンバ、ロープを掴みすぎ。イエローを与えるべき。
■エディ・アルバレス×アンドレ・ジダ
今大会、ベスト掘り出し者、そしてベストインパクトを残した試合。ジダのシュートボクセ仕込みの大振りでありながら、停まらない打撃により、2度のダウンを許したアルバレスだったが、回転の早いコンビネーションで盛り返す。そして、確かなレスリング技術とパウンドテクでボッコボコに。試合後にはコーナーポストからバク転まで披露。まごうことなき珠玉。この眩しい光、石田を持ってしても消せるのか。
■石田光洋×チョン・ブギョン
■宮田和幸×ルイス・ブスカペ
■永田克彦×アルトゥール・ウマハノフ
他の試合は完全ノーカットだった分、数十秒のダイジェストとなった3試合。ウマハノフ以外は順当に。ノーカットで観たかった。
■J.Z.カルバン×青木真也
一瞬で極められる関節を持つ青木と、一瞬でKO出来る打撃を持つカルバンの異常な緊張感を放つ、一進一退の攻防。この空気感を待っていた。PRIDE×HERO'Sの図式を最も感じられる試合だっただけに、まさかのノーコンテストは残念。どういう裁定が下され、どちらが勝ち上がるのかは一週間以内に会見にて。
■ミルコ・クロコップ×水野竜也
オープニングからCM明けまでウザいくらい、何度も煽られたミルコ凱旋。水野に、K-1での澤屋敷のシンデレラストーリーを、期待するもやはり予想通り。ミルコの次戦、噂されるマイティ・モー、バンナ、チェ・ホンマンに夢見る。
以上、簡単な寸評。総括的なことを言うと、僕らが胸震わせたPRIDEは、PRIDE以外の舞台では出せない。そんな期待はナンセンスなのだ。逆にみると、PRIDEでは足せなかったエッセンスも加味された。
これが、ケミストリーかと問われると、第一章にしては大いなる化学反応。メインの試合結果こそ残念ではあるが、両社の大連立なくしては実現出来なかったマッチメイクであることは確か。
僕が求めること。これは変わらず総合格闘技という競技の発展。
PRIDE消滅により、爆発的な格闘技ブームは儚くも消え、ライバルを失い迷走しかけたHERO'S。
同時に消えかけた総合格闘技の波。
もう一度ビッグウェーブをもたらすべく、墜ちたライバルをすくい上げたHERO'S。
両社が少し距離を置いて並立し、年末に両王者が対決するのが、最良の策なんだろうけど、それは夢物語。UFC×PRIDEしかり、利害関係の交錯する今の格闘技界おいては、難しい。
ならば企業のM&A(合併と吸収)のように、能力に合わせて、舵を取る方と、サポート役を臨機応変に担えばいい。事実、谷川Pは関与せず、元PRIDE陣営が演出〜マッチメイクまでを請け負う。
これだけの準備された舞台と、優秀なソフトを抱えているのだから、最大公約数を求められなければ、それはもう企業として罪だ。
大連立を唱えた時点で、世界最高の先導者なのだから、周りの見えぬ独裁者とならず、総合格闘技界をいい方向に扇動して欲しい。それは夢ではなく、使命であることを努々(ゆめゆめ)忘れないで欲しい。大会コピーが「誰かの夢ではない。あなたの夢である。」であるように。
これが、ケミストリーかと問われると、第一章にしては大いなる化学反応。メインの試合結果こそ残念ではあるが、両社の大連立なくしては実現出来なかったマッチメイクであることは確か。
僕が求めること。これは変わらず総合格闘技という競技の発展。
PRIDE消滅により、爆発的な格闘技ブームは儚くも消え、ライバルを失い迷走しかけたHERO'S。
同時に消えかけた総合格闘技の波。
もう一度ビッグウェーブをもたらすべく、墜ちたライバルをすくい上げたHERO'S。
両社が少し距離を置いて並立し、年末に両王者が対決するのが、最良の策なんだろうけど、それは夢物語。UFC×PRIDEしかり、利害関係の交錯する今の格闘技界おいては、難しい。
ならば企業のM&A(合併と吸収)のように、能力に合わせて、舵を取る方と、サポート役を臨機応変に担えばいい。事実、谷川Pは関与せず、元PRIDE陣営が演出〜マッチメイクまでを請け負う。
これだけの準備された舞台と、優秀なソフトを抱えているのだから、最大公約数を求められなければ、それはもう企業として罪だ。
大連立を唱えた時点で、世界最高の先導者なのだから、周りの見えぬ独裁者とならず、総合格闘技界をいい方向に扇動して欲しい。それは夢ではなく、使命であることを努々(ゆめゆめ)忘れないで欲しい。大会コピーが「誰かの夢ではない。あなたの夢である。」であるように。
![]() |
総合格闘技向上委員会ver.24.0 目標ではなく使命 ~070429_全日本柔道選手権~ |
marc_nas 2007.05.31 |
marc_nasのブログににて掲載されていた全日本柔道選手権についての寸評を、せっかくなので格信犯ウェブの方に転載いたします。
一度目は快挙とモテはやされ、二度目はそれが当たり前が如く期待される。どうも、marc_nasです。
全日本柔道選手権大会をTV観戦。
全日本柔道選手権大会をTV観戦。
格信犯編集部の柔道担当:Heroさんに電話すると
「東京にまで観に行こうと思ってたけど、行けなかったッス」
と。そこまでの熱!と少々驚きながらも、いろいろ質問する。
「東京にまで観に行こうと思ってたけど、行けなかったッス」
と。そこまでの熱!と少々驚きながらも、いろいろ質問する。
普段PRIDEやK-1ばかりで、柔道は一度しか生観戦したことがないけれど、今回の全日本選手権無差別級は、そんな僕でも分かる選手ばかりで感動ラッシュ。様々なドラマに心打たれる。
印象に残ったのは、初めて観た庄司武男選手の斜に構える戦法。
今成正和選手を思い出した。
今成正和選手を思い出した。
ショックだったのは、準決勝で井上康生選手が石井慧選手に敗れたこと。(判定2-1)
石井選手のとった戦法に対して、解説の篠原信一先生がズルイ的な発言をしており、賛否両論あるだろうが、敗れたという結果だけは後世に残る。
石井選手のとった戦法に対して、解説の篠原信一先生がズルイ的な発言をしており、賛否両論あるだろうが、敗れたという結果だけは後世に残る。
あの戦い方を審判が優勢と見るのならば、その判定基準はこれからの世界基準になるのだろうか。
それならば、康生選手が世界で生き残るためには、戦い方を変えなければいけないのだろうか。
複雑な感情がもつれ合い、いろいろと考えさせられる。
それならば、康生選手が世界で生き残るためには、戦い方を変えなければいけないのだろうか。
複雑な感情がもつれ合い、いろいろと考えさせられる。
去年、史上最年少で優勝した石井選手は、前回は快挙と騒がれたが、今回は連覇のプレッシャーから"負けられない"という気持ちが強く、楽しめなかったのか。
一方、準決勝を見事な一本勝ちで決勝戦に駒を進めた鈴木桂治選手は、大きく見えた。
一方、準決勝を見事な一本勝ちで決勝戦に駒を進めた鈴木桂治選手は、大きく見えた。
前回大会と同じ顔合わせになった決勝の軍配は鈴木選手に。
終始、無表情だった石井選手が号泣する姿は印象的だった。
終始、無表情だった石井選手が号泣する姿は印象的だった。
最も感銘を受けたのは、優勝した鈴木選手が優勝インタビューで発した言葉。
インタビュアー「全日本を制しました。今度の世界大会の目標は優勝ですか?」
鈴木「優勝は目標というか、使命です」
インタビュアー「全日本を制しました。今度の世界大会の目標は優勝ですか?」
鈴木「優勝は目標というか、使命です」
人は夢をいつしか、リアルな目標に置き換える。
その目標が至極当然となった今、それは使命へと変わるのか。
その目標が至極当然となった今、それは使命へと変わるのか。
![]() |
総合格闘技向上委員会ver.23.0 失態の重責を糧に変えて ~061231_秋山×桜庭~ |
marc_nas 2007.01.13 |
私はコラム執筆の際、昔は感情の赴くままに書き殴ったが、最近は偏った意見にならぬように客観的に、怒り・哀しみがあったとしてもなるべく冷静に、これを心掛けている。かといって、誰かの目を気にして媚びるわけではなく、自らのカラーと主たるコンセプトは歪めてはいないつもりである。
1月5日にアップした「ver.22.0 世間に晒した失態 ~K-1 Dynamite!!@大阪~」についても客観的かつ冷静に書いたつもりだ。"当事者でない私たちが憶測で物を言ってはならぬ"と、フラットな視線ということを意識しすぎて、秋山選手に対して黒ではないかと疑いながらも、不正はないものと仮定して書いた節があった。だから、秋山:○、桜庭:△、梅木:×、会社(審判団含め):××、に近い言動をした。
しかし、一昨日事態は急変した。FEG(K-1運営会社)が出した裁定は秋山=黒、試合はノーコンテスト、ギャランティ全額没収、関わった審判団のギャランティも50%没収だった。つまりFEGの裁定では、秋山:××、桜庭:○、梅木:○、審判団:×、なのだ。
FEGの調査では、入場ゲート直前で秋山選手が道衣を脱ぎ、セコンド陣が全身にクリームを塗っている映像がTBSの密着クルーにあったと。また、梅木レフェリーは桜庭選手のアピールに対する処理、ストップのタイミングも、リング下の判断を仰ぎながらTKOとしたのもルール上、何も問題なしと。
まず、秋山選手に思うこと。
「ワセリン・タイオイルは認められないが、クリームはOKだと思っていた」と認識ミスをアピール。故意ではないとしても、乾燥肌だったとしても、なぜ試合直前にスキンクリームを塗るのか。オリンピック選手は大会直前に風邪をひいても、市販の薬は服用せずに耐える。服用するとしても慎重に調査した上で漢方などだ。もちろん、ドーピング検査を考慮してのことである。それが、プロのアスリートなのだ。
試合後の会見でもジェントルに「多汗症です」と言い放ったのは何故か。桜庭選手に罪悪感はなかったのか。いち秋山ファンとして、正直残念に思う。
「ワセリン・タイオイルは認められないが、クリームはOKだと思っていた」と認識ミスをアピール。故意ではないとしても、乾燥肌だったとしても、なぜ試合直前にスキンクリームを塗るのか。オリンピック選手は大会直前に風邪をひいても、市販の薬は服用せずに耐える。服用するとしても慎重に調査した上で漢方などだ。もちろん、ドーピング検査を考慮してのことである。それが、プロのアスリートなのだ。
試合後の会見でもジェントルに「多汗症です」と言い放ったのは何故か。桜庭選手に罪悪感はなかったのか。いち秋山ファンとして、正直残念に思う。
そして、梅木レフェリーに思うこと。
K-1からのペナルティこそなかったが、梅木レフェリーは試合後に秋山選手の体を触ってチェックしていたではないか。普段の梅木レフェリーなら、リング下の指示を仰がなくとも自己判断でストップしたのではないか。確かに梅木レフェリーのブログを炎上を含め、あの試合のレフェリングというのは情状酌量の余地こそあるが、彼にもペナルティを与えてもよかったのはないかとも思う。ただ、猛省していた姿はなんだか可哀想にも見えたが。
K-1からのペナルティこそなかったが、梅木レフェリーは試合後に秋山選手の体を触ってチェックしていたではないか。普段の梅木レフェリーなら、リング下の指示を仰がなくとも自己判断でストップしたのではないか。確かに梅木レフェリーのブログを炎上を含め、あの試合のレフェリングというのは情状酌量の余地こそあるが、彼にもペナルティを与えてもよかったのはないかとも思う。ただ、猛省していた姿はなんだか可哀想にも見えたが。
最後に、審判団を含めたFEGに思うこと。
正月休みがあったから8日以降に調査が始まった、これでは遅い、遅すぎる。これだけ世間を騒がせ、ファン達がグローブ問題についても糾弾していたのだ。正月休みを献上してでも、事態の収拾を図って欲しかった。しっかりと調査をしていない段階で、秋山選手を擁護するような発言をしてほしくなかった。
正月休みがあったから8日以降に調査が始まった、これでは遅い、遅すぎる。これだけ世間を騒がせ、ファン達がグローブ問題についても糾弾していたのだ。正月休みを献上してでも、事態の収拾を図って欲しかった。しっかりと調査をしていない段階で、秋山選手を擁護するような発言をしてほしくなかった。
偉そうに真っ当なことばかり書いて、申し訳ないが、最後に言いたいことを一つだけ。
世間の目に最も触れる大晦日のメインの試合での失態。試合の映像だけしか観ていない人にも、この裁定を知った人にも、今回のことで与えた格闘技へのバッドイメージは大きい。キックボクシング・柔術・総合格闘技のオリンピック正式種目化を望む私としては、いや、いち格闘技ファンとして今回の事態はお粗末そのもので、哀しく思う。何年もかけてやっと格闘技が、このステージまで上り詰めたのだ。この重責を背負って、糧にかえて、二度とこのようなことが起こらぬように、メジャースポーツにある中立的なコミッションの設立を望む。
世間の目に最も触れる大晦日のメインの試合での失態。試合の映像だけしか観ていない人にも、この裁定を知った人にも、今回のことで与えた格闘技へのバッドイメージは大きい。キックボクシング・柔術・総合格闘技のオリンピック正式種目化を望む私としては、いや、いち格闘技ファンとして今回の事態はお粗末そのもので、哀しく思う。何年もかけてやっと格闘技が、このステージまで上り詰めたのだ。この重責を背負って、糧にかえて、二度とこのようなことが起こらぬように、メジャースポーツにある中立的なコミッションの設立を望む。